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ライフサイエンス製品

【テクニカルインフォメーション】剥離防止コートスライドグラス

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【テクニカルインフォメーション】切片剥離を防ぎ、染色工程の安定性を高める剥離防止コートスライドグラスの特長

病理・細胞診におけるパパニコロウ、HE染色、各種特殊染色免疫組織化学処理、in situ Hybridization法の過程でスライドグラス表面から組織切片(パラフィン切片、凍結切片等)・液状検体の剥離脱落を防止するために、剥離防止コートスライドグラスが広く使用されております。
従来からポリ-L-リジン(PLL)やアミノシラン(APS)をコートしたものが利用されていますが、弊社では1996年にPLLコート・APSコートの特性・課題点を考慮し、コート表面の親水性による切片の伸展作業性と剥離防止効果を向上させたMASコート(Matsunami-Adhesive-Silane coat)を新たに開発し、更に用途に合わせた改良を重ねながら、病理・細胞診検査の広範なニーズに応える製品をご提供しております。

コートスライドの接着原理

●細胞表面は負の荷電状態
細胞表面は、脂質2重層を主とする細胞膜で覆われています。
この脂質二重層を構成するリン脂質は疎水基と親水基を有し、親水基の構造内では負(COO-)の荷電状態にあります。
●ガラス表面を正電荷にすることで接着固定が可能
従来からアミノ酸であるポリ-L-リジンやアミノシランをコートすることで、ガラス表面を正の荷電状態にすることが実施されてきました。
アミノ基(NH3+)の密度が高いほど、接着性が強くなります。

剥離防止用スライドグラスのラインナップ

●PLLコート
塩基性アミノ酸のPoly-L-Lysineコート。
コート面はガラス面のOH基とイオン結合しています。
ガラス表面は疎水性となります。
●APSコート
アミノシランをコートすることによりガラス表面を+にチャージさせ細胞を固定します。
ガラス表面とアミノシランは共有結合し安定しております。
ガラス表面は疎水性となります。
●MASコート
アミノシランコートと比較して、アミノ基の高密度化を実現し、組織切片・細胞接着性の飛躍的向上が可能となりました。
ガラス表面とMASコート剤は共有結合し安定しております。
組織切片伸展作業を容易にする、親水性を有しております。
●MAS-GPコート・FRONTIERコート
MAS同等の切片剥離防止効果。
ファインフロストスライドグラスの使用により、High pHバッファ処理の耐久性が向上しました。
免疫染色、特殊染色等におけるバックグラウンド共染を低減しました。
MASコートと同等の親水性を有しています。

スライドガラスから組織切片や細胞が剥離してしまうのは何故か?

剥離が発生する要因は様々ですが、ここではスライドガラスと関わる要因について挙げます。
●組織切片や細胞がスライドガラス面と密着できていない
スライドガラスと組織切片や細胞の間に、気泡や水が残っている状態では剥離しやすくなります。
細胞材料や凍結切片においても表面に存在する微量の水分によってコート成分とイオン結合します。
・水の表面張力
ガラス表面の構造が親水性であるほど、接着に必要な水はガラス上へ広がっていきやすく、切片の伸展作業時に皺や破れができにくくなります。
また、水の表面張力は水温が高いほど弱くなり広がっていきますので、湯伸ばしを実施することで切片が伸びやすくなります。
一方、疎水性コートスライド、あるいは大気中に長期間晒られた状態のスライドガラスは撥水傾向にあるため水が抜けにくくなり、乾燥完了までに長時間要することがあります。
・水分の蒸発速度
接着で余剰となった水分を十分に蒸発・除去できていないと、部分的に剥離が起こるリスクとなります。
水分の蒸発速度には気温や湿度条件が密接に関わっており、高温・低湿度であるほどよく乾きます。当日の天候や季節、地域性の気候によっても大きく変動しますので、乾燥時間は適宜調整が必要です。
また、「水分の蒸発によって湿った空気」と「乾いた空気」を循環させるためには風量も重要ですので、風通しの良い環境が望ましいです。
・伸展板の温度
特にパラフィン包埋切片では接着時に微量の水分を必要としますが、過剰な水分が十分に抜けきらないままパラフィンが柔らかくなってガラスへ密着してしまうと閉じ込められた水分や気泡によって剥離を発生する可能性があります。
伸展板の設定温度はパラフィンの融点よりも10~20℃低い温度が目安です。
●組織切片・細胞が剥離する主な処理過程
一般論として、長時間の高温・高pH環境はガラスおよびコート剤への影響が大きく、コートスライド種類や処理方法によっては、スライドガラス表面から組織切片・細胞が剥離することがあります。
以下に各種診断目的で実施する主な処理例をあげます。
1.各種染色処理
2.抗原の賦活化処理
・単純加熱処理
・マイクロウェーブ処理
・オートクレーブ処理
3.酵素処理
プロテアーゼ処理
トリプシン処理
ペプシン処理
4.NaOH処理
5.HCI処理
6.ぎ酸処理

弊社の「免疫染色最適化スライドグラス」シリーズは剝離防止コートスライドの中でも、自動免疫染色装置での染色に耐える接着力を維持し、且つ染色時の共染(バックグラウンド)を低減するように、アミノ基の密度を調整したコートスライドグラスです。